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李好のヌシ - 韓国骨董 李好

TEL:075-532-5877

〒605-0089 京都府京都市東山区古門前通大和大路東入元町367-4 杉山ビル2階 *京阪三条駅より徒歩3分

 

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李好のヌシ

「李好のヌシ」

当店で開店時から売れずに店頭にある商品を当店の「ヌシ」としてご紹介いたします。

売れていないからと言ってつまらないものだということではなく、存在に気付いてもらっていなかったり、そもそもそれが何なのか分からずにスルーされて来たような商品を、ここでご紹介・ご説明しおります。

よく他店のホームページ等の新着商品や自慢の商品の紹介などとは、趣向を変えた形での商品紹介にしています。

李好のヌシ 第八話「白磁と瑠璃の海駄形水滴」

カテゴリ: 李好のヌシ 作成日:2021年02月27日(土)

DSCN0200 2今月も21日の東寺・弘法市、25日の北野天満宮・天神市ともに、緊急事態宣言発出中ため開催中止となりました。新型コロナ禍の方は、日々の感染者数も減少してきたため、京都を含む首都圏3都県を除く自治体では、2月末での緊急事態宣言の解除が決まりましたが、解除による開放感からのリバウンドに気を付けなければなりませんよね。特に3月は、卒業式や送別会などの宴会シーズンですので、大人数での会食による感染拡大が心配されますね。

そんな訳で、今回はまたヌシ様にご登場いただくことになりました(笑)。第八話となる今回ご紹介するのは、白磁と瑠璃の海駄形水滴です。李朝の文房具の中で、筆頭や硯に比べ入手しやすいのが水滴です。その形状は、四角や丸形、六角等から、魚、海駄、桃、亀、蛙、鳥(鶏)等の肖形の物まで多種多様です。今でも入手しやすいのは、瑠璃の魚形、染付の山水紋の四角形などでしょう。瑠璃の海駄も先の2種に比べるとお値段は随分と上りますが、まだ見つかる形の物でしょう。動物の形のもので、蛙、鳥(鶏)、兎などのなると、もう博物館か美術館、または高級なオークションなどでないと見られないものと言っていいでしょう。

今回ご紹介する白磁と瑠璃の海駄形水滴は、形状としては海駄形では比較的よく見られる手のものですが、白磁というのが希少ですし、サイズがよく見られる物に比べ、大きいというのがこちらも希少です。2番目の写真の手前左に同型の物がありますが、こちらのサイズが幅 8.1cmなのに対し、白磁と瑠璃の対の方は幅が 10.0cmあります。そういう訳で希少価値が高く、お値段も高価になります。それ故に、ヌシ様となっておられます(笑)。

今回店にある水滴のいくつかをご紹介しますと、まず2枚目の写真は、手前2点が瑠璃の海駄形水滴ですが、一般的に向かって右側のように、頭が立っている形の海駄の方が希少価値があります。後方は左から比較的よく見られる染付山水紋四角形水滴、中央が染付蘭草紋六角水滴、右が染付宝珠形水滴です。

3番目写真の2点は、鉄砂と辰砂の入ったものです。左が鉄砂、右が染付と辰砂です。2点とも何を描いたものかはよく分かりませんが、鉄砂や辰砂の入った水滴は希少です。特に辰砂の入ったものについてはその数が少なく、水滴に限らず希少価値が高いです。

4番目の写真には魚形水滴が4点ありますが、それぞれに形態、技法が違っています。手前左のものが、よく目にする瑠璃の魚形水滴です。李朝の瑠璃の水滴に中ではまだよく見ることができ、お値段も安価なため入手し易いものです。手前右のものは同じく魚型水滴ですが、鱗を表す技法の陰陽が逆の作りになっています。顔の造りも細目で、背ビレは大きいです。後方左の物も瑠璃の魚型水滴ですが、サイズも大きく、周りに波濤紋が刻まれています。手前部分に白く描かれているのが、お分かりいただけるかと思います。最後に後方右が、白磁の魚形水滴です。海駄同様に、白磁のものは数が少なく希少価値が高いです。したがって、手前左→手前右→後方左→後方右の順で希少となります。したがって、お値段の方もその順番で高価となっていきます。

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5番目写真の後方中央の染付蜘蛛巣紋花形水滴は、図録などでもこの図柄は他に見たことがありません。大変希少価値の高い物です。後方右のあるドーナツ型は、李朝独特の形状です。手前中央の白磁面取水滴は七面の面取りになっています。普通は八面なのでしょうが、このあたりが李朝らしいところですね。

最後の写真は、当店のものではなく。韓国の国立中央博物館の所蔵品です。写真の下のハングルは「いろいろな形の白磁水滴 19世紀には蛙・ガマ・海駄・兎・鯉・桃・金剛山・膝・四角・八角・豆腐等、多様な形の水滴が作られた。国立中央博物館所蔵」と記されています。これらの水滴は、韓国で医師として、また李朝陶磁器の収集家として著名な水晶 朴秉來(パク・ピョンネ)氏(1903~1974)の寄贈品です。

朴秉來氏は、収集した陶磁器の多くをを国立中央博物館に寄贈しました。彼の寄贈品は、韓国国立中央博物館2階の寄贈館 朴秉來記念室に展示されています。私がソウルの国立中央博物館を訪れる時、最も楽しみにしており、最も時間をかけて観覧するのがこの朴秉來記念室です。写真手前中央の染付辰砂海駄形水滴は、朴秉來氏が骨董商に1か月以上もかけあって、ようやく入手した品で、嬉しさのあまり白衣のポケットに入れて持ち歩き、時々触ってはその感覚を楽しんでいたのだそうです。

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李好のヌシ 第七話「祭器」

カテゴリ: 李好のヌシ 作成日:2021年01月29日(金)

DSCN7164 2新型コロナ禍の方は、緊急事態宣言が3週目を過ぎたところの本日、東京の感染者が868人と金曜日であることを考えると減少傾向の数値でしたね。今週に入ってからは東京の感染者数が1,000人前後を推移しており、まだまだ高水準だはありますが、ようやく緊急事態宣言の効果が見え始めたというところでしょうか。このまま減少して行ってもらいたいですよね。

新型コロナ禍の影響を受け、既にお知らせしたとおり、今月は21日の東寺・弘法市も25日の北野天満宮・天神市も中止となりましたし、来月の東寺ガラクタ市(第1日曜)まで、開催中止が決まっています。緊急事態宣言ほ、来月7日には解除されずに延長のような雰囲気ですので、来週の開催も微妙ですかね。

そんなネタのない時のヌシ様頼みではないですが、久々にヌシ様にご登場いただきます。今回が第七話になるんですね。前回第六話が昨年の10月4日で、かなり久しぶりになりますので、今一度「李好のヌシ」の定義について、簡単にご説明しておきます。

こちらは、当店李好において開店時から売れずに店頭にある商品を当店の「ヌシ」としてご紹介するというものです。詳細につきましては第一話に詳しいので、そちらをご参照くださいね(「李好のヌシ 第一話(2020年8月7日作成の記事)へは、こちらをクリック)。

今回のヌシ様は、1番目の写真の李朝染付祭字紋祭器台皿です。李朝後期分院の作で直径18.7cm、8.5cmと李朝の祭器としては大きめの物です。見込中央部に「祭」の字が染付で描かれています。青みを帯びた美しい肌、堂々としたサイズと美しいフォルム、しかも、高台に窯キズこそありますが無傷です。なぜヌシ様となってしまったか? 多分、お値段でしょうかね(笑)。

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その他、店内にある祭器の写真も掲示しております。これら祭器は、韓国でお祝い事や祭祀の際のお供え用に使われた器です。高台が高い作りになっているのが特徴ですね。3番目の写真のように、高台が面取りになっているものは希少です。台皿につきましては、4枚目の写真のようにお菓子や果物などを高く積んでお供えしたものです。ちょっと分かりづらいかも知れませんが、拡大して台の上の器を確認してください。写真は戦前日本の植民地時代に製作された絵葉書で、還暦のお祝いです。台鉢は汁物をお供えする時に使われた物です(写真5番目参照)。

祭器の素材としては、今回のヌシ様のような磁器の他に、木製の物と真鍮製の物があります。当店には磁器と木製の物がございます。現在の祭事やお祝い事の際に使われる祭器は、木製の物が多いようです。6番目の写真の右後方の木製祭器は盃台です。中央の窪んだところに、木製の盃を置くようになっています。購入時に盃はありませんでしたが。

磁器製の祭器を、私は酒の肴を盛ったり、お菓子を盛ったりといった用途で使っています。「昨夜の晩酌」でも何度かご紹介していますし、毎年6月末には「水無月」というお菓子を、秋の中秋の名月の時には月見団子を盛っています。最後の写真のお菓子が水無月です。また、フルーツを盛り付けてもお洒落だと思います。ぜひお試しください。

もしかしたら、来月も何度かヌシ様にご登場いただくことになるかも知れません(笑)。

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李好のヌシ 第六話 酒器扁「ほぼパーフェクトな片口」

カテゴリ: 李好のヌシ 作成日:2020年10月04日(日)

DSCN5392 3今日10月4日(日)は、第1日曜日で東寺ガラクタ市の開催日でしたが、行きませんでした。

元々東寺ガラクタ市には、もう何年も前から韓国物を扱う業者が出店しないため、ほとんど足を運んでいなかったのですが、新型コロナ禍で21日の東寺・弘法市、25日の北野天満宮・天神市が半年も開催中止が続いているため、先月・先々月とブログのネタのために行って来ました。しかし、やはり韓国物が無いと気合が入らないんですよね(笑)。

昨日の晩、寝る直前までどうしようかと考えていましたが、とりあえずは目覚まし時計をセットせずに寝て、ガラクタ市に行って来られるだけの余裕のある時間(遅くとも午前7時まで)に目が覚めたら行く、起きた時間が遅かったら行かない、と決めて寝たところ、このような結果となりました(笑)。目が覚めたのは午前8時過ぎでしたね(笑)。

9日(金)の平安蚤の市には、こちらでご報告するために必ず行って来ます。平安蚤の市も韓国物はあんまり出ないんですけど、近いですからね。店に戻るのに。それと、平安蚤の市は基本毎月10日の開催なのですが、今月は9日の開催ですので、お気を付けくださいね。私は個人的には、9日の方が10日の実家での月参りと重ならないのでありがたいです。

そんな訳で、今日はまたヌシ様のご紹介になります。今回も酒器扁で写真の李朝後期民窯の片口です。こちらも開店当初から店内では唯一の片口として店頭にあるのですが、今日までご奉公先が決まらずヌシ様となられました(笑)。

李朝の片口というと、そうそう数の多い物ではありませんので、見つけたらお値段と状態が許容範囲のものであれば、出来るだけ入手してきました。なので、これが売れたら次はこれで、その次はこれを持って来ようか、などと考えていましたが、こちらの片口がヌシ化されて仕舞われましたので、他の物の出番が無いという状態です(笑)。

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このヌシ様も合わせて計7点の李朝の片口がありますが、特に機能面からみてこのヌシ様片口が最も優れています。何んと言っても、使用時の酒の出、切れともに申し分ありません。酒の出の悪い片口ですと特に一番最初にお酒を注ぐ時に、お酒が注口の内側の穴の部分を越えて、その上の口縁部から溢れ出てしまうことがあります。また、注いだ後の切れが悪いとお酒が注口を伝ってダラダラとこぼれてしまい、お膳を濡らしてしまいます。しかしながら、こちらのヌシ様片口は酒の出・切れともによく、そのような心配はありません。

サイズは口径が16.6~16.8cm、高さが8.3cmです。こう聞くとお酒が3~4合は入りそうで大き過ぎるのでは無いか?と思われるかも知れませんが、実際にお酒を入れるのは注口の内側の穴の下までですので、そうしますと容量は2合程度で、お酒に使うには適当なサイズです。実際に先程、穴の少し下まで水を入れて測ってみたところ、380ml、約2合1勺でした。

タイトルにパーフェクトではなく「ほぼパーフェクト」としたのは、キズが有るからで、注口部と口縁に計4箇所の金継ぎがありますし、口縁にニュウも2本見られます。しかしながら、注口部とその周辺、見込み、さらには2本のニュウにもいい感じにシミが出ており、よい景色となっています。このように、キズの無い無傷完品であれば、まさにパーフェクトな片口です。まさかこれがヌシ様となるとは、思ってもみませんでしたね(笑)。

片口は、日本酒の時も勿論いいのですが、私は主にマッコリを飲む時によく使いますね。その他の片口についても、こちらのブログ「昨夜の晩酌」の方で、機会があればご紹介していきたいと思っています。既にご紹介したものもありましたね。

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李好のヌシ 第五話 酒器扁 「盃2点」

カテゴリ: 李好のヌシ 作成日:2020年09月27日(日)

DSCN5197 2今月2度目のヌシ様のご登場です。今回で第五話となりましたが、ヌシの定義とこのシリーズの趣旨につきましては第一話に詳しいので、そちらをご参照くださいね(「李好のヌシ 第一話(2020年8月7日作成の記事)へは、こちらをクリック)。

今回も酒器のヌシ様をご紹介いたします。当店の得意分野の李朝酒器から、前回はアジのいい堅手徳利をご紹介しましたが、今回は盃です。私が李朝物の収集を、酒器の中でも盃から始めたということは、これまでもこちらで何度か申し上げて来ましたが、約20年の間、李朝の盃は見つけたら片っ端から購入していました。その際の基準は、時代がある物、サイズが酒器として適当である物、できるだけキズの無い物という3点でした。そんな訳で、李朝の盃に関しては韓国の骨董店よりも豊富にございます。実際に当店で最もよくお買い上げいただいている商品が盃です。粉引や刷毛目の少々お値段のするものは、さすがにそうそうは出ないのですが、2~3万円程度のお手頃なお値段の物がよく出ますね。

しかしながら、ここにご紹介する盃2点につきましては、開店当初から店に置いているのですが、今日まで売れずにヌシ化してしまわれましたね(笑)。2点とも大変魅力のある、そしてなかなかお目にかかれない貴重な盃なんですけどね。

それではご紹介してまいります。まずは1枚目写真の向かって右の方から。こちらは時代が李朝初期ですので、堅手盃ですね。グリーンがかった釉薬にゴマふりのようになった肌は、初期の堅手にたまに見られるものです。この手のものは、数は少ないのですが、だからといって特にこういったタイプが人気があるという訳ではありません。しかしながら、釉薬にはカセなど全く見られず、肌はつやつやです。よく焼成されており、爪先で口縁部をはじくと、キーンと高いいい音を響かせてくれます。見込みには初期の器に見られる鏡がありますが、さらにその中心部分にも、丸い掘り込みが見られるのが面白いです。また、高台が少し高く作られているところも魅力ですね。高台脇には火間も見られます。底はベタ底の砂付きになっています。口径が7.6~7.8cmとサイズもベストです。さらに嬉しいことには無傷完品です。時代もいいですしね。

これがなぜ売れない!私は好きですけどねえ、この盃。ただ、よく焼けていて釉薬がしっかりしていますので、使用によってシミがついていいアジになっていくというタイプではありませんが。実はこの盃、開店当初に一度は売約済みになったんですが、2か月ぐらい支払いが無く、結局キャンセルされてしまい今日に至っております(笑)。

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もう一つ。こちらも高台が高い作りになっています。ベタ底の砂付きという点も共通していますね。しかしながら、堅手に比べると砂付きが粗い感じがします。こちらは時代が李朝後期のものになります。堅手というのは、本来は李朝初期の物に対して使うものですが、最近はこのような民窯で焼かれたと思われる色の悪い白磁を、時代関係なく堅手といっているようですね。だからこの手のものも、世間では堅手の盃といわれることが多いようですね。

こちらは口径が8.9cmで浅い作りになっていますので、サイズのいい平盃の高台を高くしたような感じです。見込みの青い釉薬は美しいです。また、この盃の一番面白いところは、見込みが渦巻きになっているところでしょう。見込みには鉄砂の粒が、大きめのもの2箇所、小さいもの6箇所ぐらいが見えますが、これらは胎土に含まれた鉄分が焼成時に表面に現れたものでしょう。こちらは先の堅手に比べると、厚手になっており若干手取りが重いです。このあたりも時代による違いですね。

こちらも使用によりシミが出て来る、所謂育つタイプではありませんが、十分に見どころの多い魅力的な盃です。口縁にニュウが1本あります。

2点ともまだしばらく売れないようなら、第四話の堅手徳利と一緒に持ち帰って晩酌し、ネタ作りに貢献していただこうかと考えています(笑)。

【追伸】こちらの盃は2点とも無事年内に売れました。ありがとうございました。

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李好のヌシ 第四話 酒器扁「アジのいい堅手徳利」

カテゴリ: 李好のヌシ 作成日:2020年09月19日(土)

DSCN5166 2来週21日の東寺・弘法市、25日の北野天満宮・天神市は、今月も共に開催中止が決定しております。

晩酌も、もう少し先まではできませんので、久しぶりにヌシ様にご登場いただくことになりました(笑)。

当店は、李朝の骨董品の中でも酒器を得意分野としているのですが、盃に比べると徳利の売れ行きがあまりよくありません。まあ、盃に比べて徳利はお値段の方もお高いので、仕方がないところではありますが、本当に値段の張るものは仕方が無いにしても、これどうして売れないかなあ?と開店当初から思っているうちに、ヌシ化してしまった徳利というのがあります。それが写真の堅手徳利です。高さが14.5cm、容量が2合をほんの少し超える程度と少々大振りではありますが、独酌用としてお使いいただけるサイズです。実際入手したての頃、基本私はこれでお代わりして飲んでましたから。今はダメですけどね(笑)。よく育っており、胴部の広範囲にいい感じにシミが出ていい味わいになっています。

この徳利の特徴として、口造りの独特さが挙げられます。李朝初期の徳利というと、ほぼラッパ口のものですが、この徳利の口は、一般的に言う盤口のように口が外側に開いてはおらず、抱き込んだような形になっていますね。同時代の鶏龍山の徳利の中で、酒徳利として使えるような小さめのサイズの物には、このような口造りの物が多いですね。

この徳利を入手したのは、もう今から20年以上も前の90年末、私がまだソウル在住の頃に黄鶴洞のもう今は無くなってしまったお店で見つけたものでした。その時のことで覚えているのは、もう1点初期堅手の徳利があって、2点買ったら値引きしてくれるように店の主人が言ったのですが、そうお安いお値段でもなかったので、これ一つだけを購入したのでした。もう一つの徳利はこれよりも小ぶりで、口造りはよくあるラッパ口の物でした。独酌用の徳利としては、そちらの方が適性があったのですが、口造りの珍しさと当時の私の酒量から、この徳利を選択したのでした(笑)。その時点では、全く酒徳利としては未使用の状態で、全くシミの無い堅手の徳利でした。

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入手してしばらくは、毎晩のようにこれを使って飲んでいましたが、やはり新しい徳利を入手すると段々と出番が少なくなり、やがて箱に仕舞ったまま数年の間、出番の無い状態が続いたことがありました。そんなある日、自宅で酒器の確認をしていた時にこの徳利の箱を目にし、懐かしい気持ちで箱から取り出してみると、なんと!このような見事なシミが出ていたではないですか。いやあ!びっくりでした。

酒器を育てようという時、ある程度の期間使い倒すことが必要ですが、その後しばらくの期間、箱に仕舞って休ませておくと、このようにいいアジに育ってくれることがあります。箱の無い物の場合、棚に仕舞っておくのでもよいと思います。ただ、その際にお気を付けいただきたいのは、器をちゃんときれいに洗ってから、仕舞うようにしていただくということです。酒器に早く味を付けたい、早く育ってほしいという思いから、器を洗わずに紙などで拭いただけにする人がいるようです。そういった状態で長期間酒器を箱などに仕舞っておくと、カビが生えてしまいますので、お気を付けください。

今回のヌシ様ですが、穴も大きくお酒も出やすいですし、形状も丸っこくて愛らしいで徳利です。まだしばらく、ヌシ様として留まられるようでしたら、久しぶりに一度自宅に持ち帰って、晩酌してみようかとも考えています(笑)。

高台に1箇所欠けの直しがあります。

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李好のヌシ 第三話「紙縒り細工」

カテゴリ: 李好のヌシ 作成日:2020年08月22日(土)

DSCN4401 2毎日暑いですね。京都では今週はずっと猛暑日で、昨日と一昨日はいずれも最高気温が39℃でした。今日明日は雷雨が降って気温の方は下がるとのことですが、それでも今日の京都の予想最高気温は36℃です。猛暑日やん!

自宅と店は徒歩で往復するのが基本なのですが、さすがにこれだけ暑いと往きはバスで最寄りの停留所まで移動し、そこから歩いています。家を出るのが10時過ぎ頃ですから、もう大体その時間には気温30℃を超えてますからね。それでも帰りは頑張って歩いて帰るのですが、自宅についたら汗だくでヘトヘトです。以前、夕方帰宅時に自宅の室内温度が33℃台だったということを、ここでお知らせしたことがありましたが、それは自宅1階のことでした。昨晩2階に上がってみると、なんと気温37℃でした!夜の室内ですよ!本当にエアコンが無いと生きていけません。とにかく、自宅に夕方帰ってから寝ている間も翌日に家を出るまで、ずーっとエアコン付けっぱなしにしてますので、今月の電気代の請求が恐ろしいです。

猛暑と共に新型コロナ禍の方も収束の気配が見えて来ません。本当なら昨日21日は東寺の弘法さんの日だったのですが、既にご案内のとおり、今月もまた21日の弘法さん、25日の北野天満宮の天神さんともに開催中止となっております。来月もどうなるでしょうか。そんな状況ですので、こちらのブログの記事については、今後しばらくこの新シリーズ(笑)「李好のヌシ」に頼ることになってきそうです。と言っても、これもそんなにネタが豊富にあるわけではないんですけどね(笑)。

第三話は、韓国の紙縒り細工をご紹介いたします。韓国の伝統的な紙である韓紙は、楮(コウゾ)という植物(樹木)の皮を用いて作られるようです。その韓紙をひも状にしてそれを編んで器物等を作成したものが紙縒り細工です。現在店内にある韓国の紙縒り細工の製品は、1枚目の写真の物と最後の写真の燭台です。

2枚目の写真の3点のかご状の器物は、比較的よく目にするものでしょう。この手の物は、自宅にまだ10個ほどはあったと思います。大小さまざまなサイズの物があり、時代のある物は大体2重編み(2重構造)になっています。また、製作後はそのままの物と表面に漆を掛けられたものがあります。3点のうち、手前の小さいものは漆をかけていない物で、奥の2点は漆が掛けられています。漆を掛けられていない物はソフトですが、漆のかかっている物はカチカチです。漆の掛かっている物の方が評価が高く、お値段も高いのですが、個人的には漆をかけていない物のソフトな手触りが好きです。蓋付きの物は貴重ですが、写真の蓋付の物はその形やサイズから、囲碁の碁石入れだった物かも知れないと思っています。

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その次の3枚目の写真の2点ですが、向かって左が赤ちゃんの帽子です。トップには元々は鈴が付いていたようですが、私が入手した時からありませんでした。草色と紅色の部分があるのですが、焼けてしまって色が分かり難くなっています。内側はまだ比較的色がよく残っているのですが。もう一つ、向って右の靴は子供が実際に履いたものではなく、装飾品として作られたものだと思います。まあ、当時の所有者がいたずらで子供に履かせてみたり、子供自らが履いてみたりしたことはあったかも知れませんけどね(笑)。

4枚目の写真の大きい方が書状入れで小さい方が財布です。書状入れのひもはオリジナルではなく、オリジナルの物が切れてしまったため付け替えたものでしょう。元々は紙縒りのひもが付いていたと思います。私の聞いた話では、これは壁にひもで吊るしてあって、家の主人が手紙を書いてそこに入れると、手紙を届ける役目の人がそれを外して、ひもでクルクルッと巻いて書状入れごと持って行き、馬で手紙を届けるのだということでした。

財布の方は、表面に漆がかけられています。内側は6枚目の写真のようになっています。このようなサイズで、このような構造の紙縒り製の財布というのは、私は他に見たことがありません。書状入れも、そうそうお目にかかれるものではありませんし貴重なものですが、こちらは自宅にあともう2点あります。財布の方は、博物館や美術館でも見たことがありません。まあ、博物館や美術館では所蔵していても、あまり面白い物でもないので展示してないだけなのかも知れませんが(笑)。

最後の写真は燭台です。こちらは全体が紙縒り製ではなく、芯に木を使い紙縒りを編み被せています。白磁の灯火器に油を入れ、芯を通して火を灯したものです。表面には漆がかけられています。灯火器の蓋をとって、花を活けてもいいんじゃないでしょうか。これは時代は若いですね。20世紀後半、製作から40~50年程度の物だと思います。

韓国の紙縒り細工の古い物は、韓国でも数が少なくなって来ていますので、お値段の方もずいぶんとお高くなってきていますね。

この他に、紙縒り製のお膳も自宅にあります。ホームページのトップに写真があります(丸抜きの写真の中の膳です)のでご覧ください。

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李好のヌシ 第二話「베개(ぺゲ) 枕」

カテゴリ: 李好のヌシ 作成日:2020年08月18日(火)

DSCN4340 2既に「お知らせ」欄でご報告したとおり、今月も21日の東寺・弘法市と25日の北野天満宮・天神市は新型コロナ禍のため開催中止が決定しましたね。これで4月から5か月連続の開催中止です。新型コロナ禍が、もう半年もの間、我々人類の日常生活に大きな影響を与えてきていますが、今年の初めにこんな事態を誰が予想したでしょうか。

先日の五山送り火も、新型コロナウイルスの感染予防策として、観光客の密集を避けるため、規模を大幅に縮小して行われましたね。例年は「大」「妙法」「船形」「左大文字」「鳥居形」などの文字や図形が浮かび上がるのですが、各山とも点火する場所が減らされたため、点々と火がともる形となりましたね。送り火は太平洋戦争で1943~45年に中止されたことがあったようですが、縮小して行なわれたのは、これが初めてのことです。でもまあ、火をともして先祖の霊を送るのが送り火の目的ですから、文字や図形が表せなくても十分にその目的は果たせたと思います。

この数日前の8日夜には、大文字をともす如意ケ嶽でREDライトを使ったと思われる「大」の形がライトアップされるという「いたずら」もありました。これは到底「いたずら」で許されることではありませんし、保存会の人たちや多くの京都市民は憤りを感じたと思います。しかしながら、私は過去に、個人的にもっと憤りを感じた送り火がありました。 2000年12月31日つまり20世紀最後の大晦日に「21世紀京都幕開け記念行事」として「ミレニアム送り火」と題され真冬に五山の送り火が行われたことがありました。確か、鞍馬の火祭もこの時行われたと記憶しています。市民からの要望もあってのことだったようですが、当時テレビの中継を観て、とても不愉快でした。

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またしても前置きが長くなってしまいましたが、李好のヌシ 第二話は「베개(ペゲ)」韓国の伝統枕をご紹介いたします。現在、店内には「베개(ペゲ)」枕が6個あります。開店当初はもう3個あったのですが、韓国の業者に売ってしまいました。なので、お客様にご購入いただいたことはありません。

韓国の伝統的な枕には、1枚目写真の向かって右の2つのように木製の派手な装飾の見られないものもありますが、両端の枕飾の部分を베갯모(ペゲンモ)と言いますが、そちらに装飾が施されたものが多く見られます。最も多いのが刺繍が施されたものでしょう。ソウルの踏十里や長安坪の民俗品を扱う骨董店に行ってみると、美しい刺繍の施された枕が大量に積まれているのを見ることができます。

現在、当店にある枕は、そのような枕飾の部分が刺繍のものではなく、麦藁細工が施されたものです。私がコレクターの時に麦藁細工のものだけを集めた結果です。刺繍の枕に比べ麦藁細工の物は数が少なく貴重です。当然お値段の方も高くなりますね。枕飾の板部分に色を付けた麦藁を貼り付け、花や蝶、おめでたい「福」や「壽」の文字などが描かれています。

1枚目写真の真ん中の2点は、麦藁細工が両端の枕飾部分だけでなく、全体に施されている大変貴重なものです。特に3枚目写真の物は枕飾部分に「福」「壽」の文字が描かれ、その他の面には幾何学的な模様が施されています。残念ながら、麦藁の剥がれてしまっている部分が多いのですが、文字で見て下の部分の面は、ほぼそのままの状態で残っています。このタイプの物は、類例を見たことがありません。

写真1枚目の右の木製2点のうち、5枚目写真の物は、中に何か細い紙のような物が入っていて、振るとサラサラという音がします。これは香草か何かが入っているようです。側面にスリット(切込み)が入っているので、そこから香りが出るようにしたのでしょう。今は全く香りはしませんが。ちなみに、こちらは朝鮮時代のものではなく、日本の植民地時代(戦前)以降のものだと思います。

もう1つの木枠だけの小さな枕は、6枚目写真のように小さい壺などに花一輪を差して飾ってみてはどうでしょうか。また、小さな金銅仏等をお持ちでしたら、それを飾ってみてもいいでしょう。この手の枕には、枠だけの物の他に、枠の中に欄間のように彫り物が施されたものもあります。

韓国の枕の中には石か何かの木の実などが入っており、振るとカラカラと音がします。これは、目覚めた時にそれを知らせるために鳴らすためのものだと言われています。

枕飾の装飾には刺繍と麦藁の他に、高級になりますが螺鈿や華角張(牛の角を薄く切ってそれを半透明にし、その裏面に顔料で絵を描き、これを貼り付けて装飾したもので李朝独特の工芸品。糸巻、物差し、櫛、筆筒、箪笥等にその技法が見られる)の物もあります。

現在、韓国でこれら枕を収集する人には、枕として使うという人はまずいないと思います。そのまま部屋の装飾品とするか、多くは枕飾の部分だけをはずして額装にして飾るなどして楽しんでいるようです。

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李好のヌシ 第一話「가락지(カラクチ)指輪」

カテゴリ: 李好のヌシ 作成日:2020年08月07日(金)

DSCN4066 2新シリーズです(笑)。新型コロナ禍で骨董関係のイベントが開催中止となる中、こちらのブログもお料理・お食事関係に内容が偏重してしまい、グルメブログみたいになってきてしまいましたので、新たに考案したシリーズです。

当店、李好において開店時から売れずに店頭にある商品を当店の「ヌシ」としてご紹介するというものです。売れていないからと言ってつまらないものだということではなく、存在に気付いてもらっていなかったり、そもそもそれが何なのか分からずにスルーされて来たというような商品を、ここでご紹介・ご説明しようというものです。よく他の骨董店のホームページで、新着商品や自慢の商品の紹介などをされていますが、そういう他所でもやっていることはやりたくなかったので、少し趣向を変えた形での商品紹介にしようと思います。

「李好のヌシ」という名称は、もちろん関西のある深夜番組の中のシリーズ名からパクったものです(笑)。

記念すべき第1回目は、李朝の가락지(カラクチ)指輪をご紹介します。これは、全く売れていないという訳ではありませんが、2点ぐらいしか出ていませんので、まだたくさんあります。店内だけではなく自宅にも(笑)。

李朝の指輪というと素材が銀の은반지(ウンパンジ(銀指輪))がよく見られますが、他にも白銅や真鍮、銅製のもの等があります。2枚目の写真の奥左が銅製、その他の3点が真鍮製です。

また、二つ一組で使うものを가락지、쌍가락지(カラクチ、サンカラクチ)、1つだけのものを반지(パンジ)、二つがつながっているものを합반지(ハップパンジ)と言います。3番目の写真が쌍가락지(サンカラクチ)、4番目の写真が합반지(ハップパンジ)になります。

쌍가락지(サンカラクチ)は、1本の指に2つをはめるのものです。こんなゴツイ指輪を2つもはめていたら不便だろうと思いますが、朝鮮時代に銀製の指輪をはめられるような人は身分の高い人たちで、家事なども一切しなかったでしょうから、ただ自慢げに付けていたのでしょうね(笑)。쌍가락지(サンカラクチ)は、婚姻と夫婦一心(夫婦の絆)を象徴したもので、既婚女性のみが使用し、未婚の女性は반지(パンジ)を使用しました。

指輪には、コウモリが彫られている物がよく見られます(蝙蝠というより蝶のように見えますが)。日本では不気味なイメージのコウモリですが、漢字の蝙蝠の「蝠」の造りが「福」と同じであることから、中・韓では吉祥紋とされています。他に長寿や子孫繁栄を願う文字が刻まれたもの等もあります。3枚目写真の奥左の쌍가락지(サンカラクチ)には、図案化された「壽」の字が刻まれていますね。ちなみに、4枚目の写真手前右の小さな합반지(ハップパンジ)は、赤ちゃんが1歳の誕生日のお祝いの時に付けるものです。

쌍가락지(サンカラクチ)は、ご夫婦やカップルでペアリングのように1つずつはめられたらおしゃれだと思います。写真の銀の指輪は黒くなっていますが、歯磨き粉を付けて歯ブラシで磨いたら驚くほどきれいになりますよ。でもやっぱり、もっときれいな指輪の方がいいですかね(笑)。

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